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潜在価値の顕在化-Actualized Marketing詳論その4

以前ご紹介した個人のMobile Valueと社会のSocial Value。このふたつの価値は、ソーシャルメディアとネットワークが日々生命体のごとく成長活性化することで、その瞬間に無数に生成されます。しかしそのValueのほとんどは目に見えるものとしては現われません。見えてくるものはFacebookにおける友人関係や彼らのメッセージのやり取りであり、Facebookページや広告のインサイト関連の計数です。このソーシャルグラフや計数そのものには価値はありません。ここに潜む潜在価値を顕在化すること、それこそがマーケティングの最重要課題です。

見えないもの、無意識の役割

人間にとって価値あるものとは、意味を持ったもの、つまり言葉にできるものを指しています。しかし、人間はこの瞬間に起こっていることや身の回りにある環境そのものを意味づけして言葉にして生活しているわけではありません。

たとえば、いまこの瞬間あなたは自分が呼吸をしていること、「吸って、次は吐かなければ」などと言葉にして生活しているでしょうか?そして、この頃なんとなく気になるあの子(あの彼)、なんだかよくわからないけど気になるなぁ…好きなのかなぁ…など。

このようにふだんは意識していない自分自身の心にあるものを言葉にして考えること、そこから近代が始まりました、自己の意識化です。自分の考えを意識化して言葉にすることで他人とのコミュニケーションが可能になり、社会や文化が多種多様に広がり進化しました。

その一方で、言葉で考えるようになると人は、なぜこれをやっているんだろう?とか、なぜこれが必要なんだろう?という悩みを抱えるようになります。そしてその悩みはほとんどが解決困難であるものが多いのです。

たとえば、なぜ人間は言葉をしゃべりはじめたのでしょうか?言語学者はいろんな仮説を述べていますが正解といえるものは決まっていません、そして地球上にいる60億人全員がだれもその答えを知りません、しゃべりはじめたのは自分たちなのに、その理由を知らないなどという、なんという矛盾を抱えてしまったのでしょうか*1。

人間はこの矛盾に満ちた現実を変えるため、そして自分の人生を意味づけるために生きています。その生きる営みを支えるもの、人生に意味を与える助けをするものが商品であり、サービスなのです。だから、どの商品やサービスも矛盾に満ちた現実を変えるだけの力や意味を持たなければ存在することはできません。

ふだんは意識することもなく言葉にすることもない、この矛盾に満ちた現実を変えられる価値を言葉にしたり、見えるようにしたり、デザイン化する、つまり潜在価値の顕在化とは商品やサービスの本質を表しています。

現代の脳科学や心の学問では言葉にすることができない無意識が人間の様々な生きる活動を支えていたり、思考や感情と身体行動に大きな影響を与えているという実験やデータを見ることができます*2。

意識して言葉にすれば信じていいのか?

この見えないという価値、そして人間の行動というのは複雑なもので、人間は意識して言葉にしてしゃべっているから本心だ、とは言い切れないものがあります。

こんな話があります、外国のマーケティングリサーチでソニーがラジカセのラインアップ拡大の時にあるテストをしたそうです。サンプルで集まってくれた若者に「ラジカセの色はどれがいいか?」と質問したところ、それぞれに「女の子はピンクがいいだろう」とか、「ブルーはスポーティでいいね」などと言っていたそうですが、テストが終わって最後にソニーの社員が「お礼に好きな色のラジカセを持って帰っていいよ」と言ったところ、全員が黒いラジカセを持って帰ったそうです*2。

また、マーケティングリサーチにおいては、ほとんどの集計結果がリサーチするマーケッターの理論を証明するための偏向データであるという事実もあります*3。つまりマーケティングにおいても、人間が意識に上らせていて言葉にしていることでさえ実際には本質を捉えているかどうかは定かではないということが言えます。

見えない価値を見えるようにするとは?

人間は無意識に存在する本当の気持を表現することはありえないのでしょうか?そんなことはないようです、実は自分が忘れていたと思っていたこと、恥ずかしくて忘れようとしていたこと、まったく気にしていなかったことを“あるきっかけ”で語り出すようになります。

それはフランク・ウォレンという人の「50万通の秘密」というプロジェクトが実証しています*5。

このプロジェクトは、ウォレンさん自身がある悩みを抱えていて、この悩みを解決するには他人と共有するしかない、という考えに至り、街中の人に「あなたの秘密をシェアしてくれませんか?」と言って自分の住所を書いたハガキを配ったそうです。そうすると、じわりじわりと集まりだして、口コミやWEBを通じて評判になり、いまや50万通以上にも登るハガキが届くそうです。このプロジェクトはTEDでも紹介されウォレンさんご自身がプレゼンテーションしているのでご覧になってみてください。ウォレンさんのプレゼンテーションを見ると、人間は誰しも無意識に存在する記憶が多数存在し、あるきっかけでそれを積極的に語りだすということをします。

「ウォレンさんのプロジェクトは匿名だから成り立っているのだろう?実名制のソーシャルメディアではできないだろう?」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、これは匿名実名の制度の問題ではなく、どのようなときに無意識が意識化されるのかということです。とてもプライベートなことであれば、親しい友人や家族に話すかもしれない、家族や友人に話すことができないことは同じ秘密や悩みを持つソーシャルネットワークの他人に表現するかもしれない、つまり、いかにすれば内省的になれるきっかけや環境を作ってあげられるかということです。

そしてもうひとつ、自分自身が無意識に必要とすることは、その思いや感情が身体を通じて行動に現れます、何気なく自販機やカフェでコーヒーを飲んでしまうように。このようにソーシャルメディアでの情報交換や行動のその傾向は計数やデータとして現れるでしょう、クリス・アンダーソンが“ロングテール”として、マーケッターの意識に上がって来なかった無意識の市場をデータから発見したように*5。

潜在価値顕在化の実践

つまり問題は“潜在価値をどのように見つけるか”ということになります。これには大きくふたつの要件が必要になってきます。ひとつはソーシャルネットワークをはじめ、様々なメディアやプラットフォーム上で繰り広げられる参加者のやり取りから“意味に値するもの(Social Value)を見つける能力”。もうひとつは“個人の潜在意識(Mobile Value)をデータ化する機能”です。

ひとつめの“意味に値するもの(Social Value)を見つける能力”は企業人自らが鍛えて獲得することができます。全社員でその知恵を獲得する習慣を作ればよい、ということです。それが各企業のブランドであり競争優位を形成する能力ということになります。つまり、どの企業にもその可能性があるということです。

ソーシャルメディアの登場で本格的なE2Eを実現しつつある現在のコミュニケーション環境では、潜在価値を顕在化するためのソーシャルシフト時代の方法があります。潜在価値に意味や価値を与えて顕在化していくには、社会や文化にどのようなストーリーや文脈が読み取れるのかを観察すること、そしてソーシャルメディアにおけるユーザーの欲望(無意識)を観察すること、社会の文脈とユーザーの欲望を社員自らの哲学と知恵でどのように解釈するかというプロセスが必要になります。これを図解すると下記のようになります。

そして、ふたつめの要件である“個人の潜在意識(Mobile Value)をデータ化する機能”ですが、残念ながら現時点では、このような機能はこの社会において存在しません。Facebookにソーシャルグラフが可視化され、Googleで検索結果をGoogle Analyticsでデータ化しているではないか、というご意見もあるかもしれませんが、確かにそれも上記のチャート図の左側の観察領域のデータに入るのですが、個人の潜在意識までは射程がとどかず不充分に思われます。

前回も「交換とはマーケティングの中核となるコンセプトであり、求める製品を他者から手に入れ、お返しに何かを提供することである」というフィリップ・コトラーの言葉をご紹介しました。既存のマーケティングやプラットフォームには、個人の交換に関するすべての行動データを統合する機能が存在しないので、潜在価値を顕在化させるナレッジを連携させる仕組みを実現できないのです。社会も市場も流動化しています。いまやデジタルとリアルの流動化は日常になりました。デジタルとリアルの両方にまたがって現実を支えるものは「交換」です。Mobile ValueどうしやMobile ValueとSocial Valueの交換、それを支えるのがActualized Marketingです。

これからのマーケティングには、このActualized Marketingのメソッド、潜在価値の顕在化とコネクトと交換を実現するためのプロセスと機能が求められています。

Actualized Marketing Process

Connect a Value and Make a Liberty!

*1「文化のフェティシズム」丸山圭三郎著

*2「無意識の脳 自己意識の脳」アントニオ・R・ダマシオ著、「脳の科学史」小泉英明著、「無意識」ジークムント・フロイト著

*3「ベロシティ」アジャズ・アーメッド&ステファン・オーランダー共著

*4「心脳マーケティング」ジェラルド・ザルトマン著

*5「50万通の秘密」フランク・ウォレン TEDサイト

*6「ロングテール [アップデート版]」クリス・アンダーソン著

Actualized Marketingの詳細はこちら
  1. ソーシャルメディアプラットフォーム上で潜在的価値を顕在化するActualized Marketingとは何か?その1
  2. ソーシャルメディアプラットフォーム上で潜在的価値を顕在化するActualized Marketingとは何か?その2
  3. これからのマーケティングの最重要キーワードMobileValue(モバイルバリュー)とは?― Actualized Marketing(アクチュアライズドマーケティング) 詳論その1
  4.  SocialValueが社会とマーケティングを変える― Actualized Marketing詳論その2-前編
  5. 未来をひらくSocialValue― Actualized Marketing 詳論その2-後編
  6. 流動化とコネクトそして交換-Actualized Marketing 詳論その3
  7. 潜在価値の顕在化-Actualized Marketing詳論その4

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