米Valveの「Steam Greenlight」に見る、フィードバックを取り入れる必要性

「この製品に対して意見したい」
そう思ったことは、皆様も多々あると思う。私にもそういった経験は数えきれないほどある。
特に、日本でもソーシャルメディアが普及してきた今は、さらに強くそう思うようになった。なぜだろう?

私はソーシャルメディアの本質は、人と繋がることにあるからだと思う。つまり、意見したいというのは、製品を開発している人と繋がりたいと思うからだ。
企業がFacebookページやTwitterアカウントなどを開設する事例も増えてきた。しかし、製品に対しての意見を積極的に聞き入れている企業は少ない。もちろん製品の主体は企業が考えるべきであるし、ユーザーからフィードバックされた内容を全て反映させる必要はないだろう。ただ、外枠——ユーザーが長い時間触れる部分——に関しては、ユーザーからフィードバックされた内容を積極的に取り入れていくべきだ。いわゆる、傾聴の必要性である。

傾聴を行うプラットフォームは基本的に2つある。1.ソーシャルメディア、2.オウンドメディアだ。

その中に、例外が生まれた。それが今回解説する「Steam Greenlight」である。

Steam Greenlightとは

Steam Greenlightを詳しく解説する前に、少しSteamというプラットフォームの説明をしよう。
Steamとは、米Valve社が提供するゲーミングプラットフォームである。ゲームの配信や著作権管理、Coop(ネット対戦)サポート、ユーザーの交流などが行われている。
2011年にはアクティブユーザー数2500万人、執筆現在(18:30)の同時接続ユーザー数が250万人という、ゲーミングプラットフォームとしては相当巨大なプラットフォームだ。私も日々Steamを利用してゲームをしている。

そんなSteamが、8月30日にローンチしたのがSteam Greenlightだ。
このSteam Greenlightではゲームデベロッパーやパブリッシャーが開発中であったり、過去作品のゲームをSteamに登録し、ユーザーがそのゲームを評価したり、意見したりすることが可能となる。その結果、ユーザーの高い支持を得られた場合に、Steamでゲームをリリースされる。
実際の画面はこうなっている。

動画や画像、文字による解説を見て、ユーザーは自由にコメントすることができる。ゲームの開発者からのコメントをもらうこともある。

ココに注目!

このSteam Greenlightで最も注目すべき点は開発中のものに対する意見がユーザーからもらえること
開発しているものがユーザーの望んでいるものかどうかは、マーケティングとして事前に調べるのが普通だ。しかし、それでも限界はある。マーケティングは万能ではないからだ。
しかし開発中のものをオープンにして、慎重に傾聴していけば、ユーザーの望んでいるものとの“ズレ”は生じづらくなる。
これはゲーム開発以外にも言える。たとえばスマートフォンのアプリのアップデートでがっかりした経験はないだろうか? 私はいくつもある。そのせいでアプリを消す、というのも珍しくない。これはユーザーが望んだものとの“ズレ”が生んだ結果だ。このズレが大きければ大きいほど、使って幸せになる人は少なくなる。

さらに注目すべき点をもうひとつあげておきたい。それは開発に参加したことでユーザーが得られる親近感である。
これはソーシャルメディアが得意とする分野だ。しかしゲーミングプラットフォームに集まるゲーマーだからこそ、ソーシャルメディアと同等以上の効果があると思う。ソーシャルメディアで好きなブランドで触れるより、特化されたプラットフォームで好きなブランドに触れられる方が“親近感が湧く”のは、私の実体験だ。このブランドに対する親近感が高まり、目的のゲーム以外を買うほどの愛着が湧いたのは余談である。
もちろん、全ての業界でSteamのように特化されたプラットフォームがあるわけではない。そこには留意すべきだが、外食産業や観光業であれば、容易に行えるのではないだろうか。

まとめ

Steam Greenlightから、これからの製品開発に必要な要素を2つ見つけてきた。
1. ユーザーからのフィードバックは、しっかりと傾聴すること
2. ユーザーを開発に参画させることで愛着を育むこと

以上の点はソーシャルメディア時代において、特に重要な点だ。先の解説には記述しなかったが、愛着を持つことで、ソーシャルメディアでブランドの拡散してくれるようになる。この効果も見逃すことはできない。

最初は開発中にユーザーの意見を取り入れることに抵抗があると思うが、ユーザーの望んだことを具現化する方がいいか、自分たちでリサーチした結果を具現化した方がいいかという問いに、後者と答える人は少ないだろう。
ソーシャルメディアなどを通じて、世界はパブリックな方向へ向かっている。こうした流れは加速する兆候があっても、今のところ停滞する兆候はない。
開発中の製品をパブリックにして、ユーザーからのフィードバックを得るというのは、今後製品開発する上で重要なことになるだろう。

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